本を出版させていただくようになって、よく聞かれるのが印税についてです。
印税は基本、「本体価格×発行部数×印税率」で決まります。
本体価格、発行部数、印税率は、その著者や出版社の実情により大きく異なります。
価格は均一性がある感じですが、私が聞く限り、初版の発行部数は
3,000部~10,000部とまちまちで、印税率も3%~10%と、
著者によってかなり開きがあるようです。
そしてこの印税契約は、主に2つに分かれます。
(1)発行部数印税契約(日本型)
→増刷されるたびに印税が支払われます。
(2)売上(販売)部数印税契約(アメリカ型)
→増刷時ではなく、売れた時に印税が支払われます。
日本での出版契約の場合、ほとんどは、(1)の発行部数印税契約になりますが、
最近アメリカのマーケティング手法などが認知されることで、
(2)の売上(販売)部数印税契約を著者自身が求めることが、
ポツポツと出てきているようです。
(1)の発行部数印税契約では、出版社は、売れた実績ではなく、
本の部数を刷った際に著者への印税の支払が発生します。
ある程度、売れる見込がない限り、在庫リスクや資金繰りなどを考慮して、
保守的な部数で刷って様子を見る、という行動をとりがちです。
いっぽう、著者側においては、ビジネス書の場合、印税収入を当てにしている人よりも、
別に事業を持っていて、相乗効果を狙ってくる著者が少なからずいます。
そのような場合、本で稼ぐこと以上に、とりあえず可能な限り多く刷ってもらって、
より多くの書店で取り扱ってもらい、認知を広めていきたい、意向があります。
そのような場合は、(2)の売上(販売)部数印税契約を選択することにメリットが出てきます。
いずれにせよ、印税収入を考えた場合、「本体価格」、「部数」、「印税率」、
この3つの数字が重要です。
では実例を見てみましょう。
「見事トップ賞に輝いたチームには、ロマン輝くエステールから
プラチナダイヤモンド・ファッションリングを差し上げます。」
が、アナウンサーとしての初コメントだった、局アナとして
トップクラスの人気を誇る安住紳一郎氏が、2006年に書いたエッセイ
「局アナ 安住紳一郎」安住 紳一郎 (著)があります。
この本のあとがきで、一部言葉をボカシながら、ご自身の印税について、書かれています。
しかし、印税契約の3つの数字が頭に入っていれば、だいたいの数字を把握できます。
この本の本体価格は952円であり、1冊売れると印税は76円と書いてあります。
→印税率は8%(76円÷952円)と推測できます。
しかし、会社員の身分であるため副業とみなされ、その印税は一度TBSに入り、
社内規定により、半額分だけ本人に支払われるそうです。
→よって、実際は4%の印税率。
初版で安住さんの個人口座に振り込まれたお金は、273,600円だったそうです。
そうしますと、源泉所得税が単純に10%天引きされていると仮定できますので、
304,000円(=273,600円÷0.9)が印税の総額と分かります。
印税は8%の1冊76円ですが、TBSと折半なので、4%の1冊38円となります。
よって発行部数は、304,000円÷38円=8,000部と推察できます。
・952円×8,000部×4%
最近は、著者自身は口述で、編集プロダクション等に書いてもらい、
印税を折半にしたり、およげ!たいやきくんのように印税契約ではなく買取り契約
の場合もありますので、例外も数多く存在します。
印税契約というと、楽してお金を稼ぐイメージや、増刷=お札の輪転機を廻す、
印象を抱きがちですが、しかしそれらは圧倒的に少数です。
東野圭吾氏は、出版業界は相撲部屋と似ていて、活躍する力士がいることで、
重量にあがれない力士を養うことができる、と表現されています。
また、私が10代のころ食い入るように読んでいた「ホットドッグプレス」の
「ハードボイルド人生相談」でお馴染みの北方謙三氏いわく、
「小説だけで食えてる奴は、日本に15人いるかいないかだ!」
結論としては、楽な世界、楽な業界など存在しない!
そして、楽なグループリーグも存在しない。
頑張れ!サムライブルー!