コラム

FABRICA[12.0.1]-BABY BLUE-

最近たまたま、会員でもないTSUTAYAに入ったところ、懐かしい作品に目が留まりました。
思わずその場でTSUTAYA会員になり、そのDVDを借りて、その日に一気に観賞してしまいました。

タイトルは、「FABRICA[12.0.1]-BABY BLUE-

2010年に休刊してしまった「TOKYO★一週間」という雑誌がありました。
以前、私の顧問先にその雑誌や講談社系を主戦場として、ペンを振るうライターがいました。

その人は、1つの持ち込み企画を紙面上で展開していました。
演劇界の多くの人々は、アルバイトでなんとか生計を立てており、
結局は、経済事情などから演劇の道を断念してしまいます。

そこにスポットライトを当てて、世に知られていない素晴らしい多くの劇団を
メディアを通じて紹介し、少しでも演劇で食べていける人口を増やしたい、
という熱い思いが根底にありました。

2007年当時、私も独立したばかりで何もない状態で、時間だけはあったので、
その人に誘われるまま、毎月のように、演劇鑑賞をしていました。

映画は見ていても、演劇なんてほとんど接点がありませんでしたが、
数多くの作品に触れたり、劇団の打上げとかに参加させてもらったりしているうちに、
かなり感化されていったような気がします。

その中でも、印象に残っている忘れられない演目というものがいくつかあります。
そのうちの一つが、TSUTAYAで思わず手に取り、セルフカウンターのレジに並んだ、
FABRICA[12.0.1]-BABY BLUE-でした。

この演劇の製作・企画はROBOTで、演出は本広克行氏。
ROBOTといえば、映画、TVCM、アニメーション、CG、ゲーム、Web、
など様々なコンテンツを手掛けるクリエーター集団。

手がけた作品は、映画だと、
「踊る大走査線」「ジュブナイル」「海猿」「サトラレ」
「ALWAYS3丁目の夕日」「UDON」「明日がさるさTHE MOVIE」
「Love Letter」etc…

アニメだと、
「ストレイシープ」「スペーストラベラーズ THE ANIMATION 」
「トラブルチョコレート 」etc…

CGだと、
「鬼武者シリーズ」「バイオハザード0」「 クロックタワー3 」etc…

本広克行氏は、ROBOTに籍を置きつつ、ドラマの演出や映画の監督をつとめています。
演目タイトルの「FABRICA」は、アート用語(※厳密にはスペイン語)で、
「準備」とか「工房」、あるいは「実験」といった意味があるそうです。

この作品のテーマを一言で表現するなら、「自然の摂理」。

あらすじ***

主人公である夫妻は、晩婚であったが、諸事情により、高齢出産を決意。
夫は、受験浪人の子供を持つ再婚であり、妻は、仕事に没頭するあまり、
私生活を後回しにしてきてしまった初婚。

夫婦は、仲間や息子の協力を仰ぎながら、病院に通いながらも
なんとか「子作り」に励む。

しかし、しかし、なかなかできない。
焦る2人。感じる周囲のプレッシャー。
必要以上に気遣う周囲。

そんな中、大学受験を控えた息子が、彼女を妊娠させてしまう。
「子供を堕ろすから、金を貸して欲しい。」
そう言ってきた息子に、思わず手を上げてしまう父。

そして、父の再婚相手を、お母さんと呼べない息子。
返す刀で、「あなたなんか息子と思っていないわよ!」と宣言する父の再婚相手。
子供を望む人たちには恵まれず、望んでいない人たちに子供ができる現実。

父の再婚相手は、そんな思いからか、妊娠させ堕ろさせた息子に、
「それは、人殺しだ!」と罵倒してしまう。
親子の葛藤。

しかし、実は、妊娠させたのは、息子ではなかったのだ…。

なぜ、息子は、妊娠させたとウソまでついて、父親からお金を借りようとしたのか?
晩婚の夫婦に子供はできたのか?

ここまで***

「生と死」、「出会いと別れ」、「希望と絶望」、「守るべきものとは?」…
複雑に絡み合った小テーマが、「自然の摂理」という大テーマに収斂されていきます。
最後まで一気に見させる圧巻の2時間でした。

以前、ビートたけしが語っていた言葉を思い出しました。
「人生はサウナみたいなものだと思う。
サウナの中で我慢すればするほど出たとき気持ちいいように、
俺は生きているときできるだけ踏ん張ばるんだ、
そうすれば死ぬとき気持ち良く死ねると思っている。」

ぜひ、多くの人に見てもらいたい作品の1つです。
私はこの作品の副題「BABY BLUE」という言葉が、
産後に母親が経験する鬱的な感情を指す言葉だと初めて知りました。

ちなみに、私がUNICORNで一番好きな曲は、「Maybe Blue」です。

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